理事長挨拶
皆様、あけましておめでとうございます。
今年、NPOはがくれ呼吸ケアネットは発足5年目を迎えます。この間に慢性呼吸器疾患管理には様々な進歩がありました。特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)においては、身体活動性の低下が予後不良と密接に関連していること、急性増悪や喘息の合併が病変の進行に関連すること、など、 重要なことが明らかにされました。治療薬の面では、各種の気管支拡張薬合剤が発売され、COPDでも1秒量が改善する時代がやってきました。また、それに伴い、吸入デバイスの選択の幅も拡がりました。一方、慢性呼吸器疾患では軽度認知障害を合併する頻度が高く、教育指導にかなりの工夫が必要であること、など新たな課題もクローズアップされつつあります。
はがくれ呼吸ケアネットでは地域において呼吸ケアにかかわるスタッフの臨床力を高め、円滑に包括的呼吸ケアを進めることを目標に、様々な医療従事者教育活動を行ってきました。また、一般の方のCOPD認知率をあげ、患者さんが早期に適切な診断・治療を受けることができるようにCOPDの啓発活動に努めて参りました。その結果、幾つかの地区では積極的に呼吸ケア、リハビリテーションが行われるようになり、若手メンバーの参画もあって、活動の裾野は格段に拡がりました。
今後の課題の第一は、多職種が統合的に患者へ取り組むことができる基盤の充実です。そのためには、現在中核となって活動している理学療法士・作業療法士だけではなく、看護師、薬剤師、栄養士などへの働きかけが重要と考えています。各施設で職種横断的な回診やカンファレンスを行うことにより、包括的な患者管理を充実したいものです。
第二の課題は、はがくれ呼吸ケアネットからのエビデンスの発信の強化です。現在、作業療法士のグループが、認知障害のスクリーニングを踏まえた呼吸リハビリテーションのあり方について共同研究を行っており、成果が待たれるところです。その他の分野でも、日常の診療で生じた疑問にアドレスする研究とその成果の発信が、私達の実力向上には欠かせないと考えています。患者さんの前向き登録を整備するとともに、会員間での疑問点の整理・熟成を支援することで、エビデンス作成・発信能力を高めて行きます。
第三の課題は、2016年に当NPOが継承したCOPD診断支援事業の拡大です。現在6つの賛助会員施設へ検査技師派遣を行い、呼吸機能検査に基づくCOPDの診断を行っています。呼吸器専門施設以外でもきちんとCOPDの診断できる体制を築くことは、全国でもまれな取り組みであり、多くの患者さんが福音を得ています。新年度には10施設程度まで派遣先を増やし、COPD診断支援事業の基盤を確固たるものにしたいと考えています。
私達の活動を推進するためには、人材面・資金面ともにまだまだ不足しています。呼吸ケアに興味をお持ちの皆さんの積極的な参加と関係各位の強力なご支援を宜しくお願い致します。
平成29年1月吉日
NPOはがくれ呼吸ケアネット 理事長 林 真一郎